第64回例会「ジェンダー史と帝国主義研究の現在地」のお知らせ
日本アメリカ史学会会員のみなさま
日本アメリカ史学会では、「ジェンダー史と帝国主義研究の現在地」をテーマとして、第64回例会(12月例会)を早稲田大学戸山キャンパスでの対面と、オンラインのハイブリッド形式にて開催します。また、例会終了後は懇親会を開催する予定にしております。どうぞ奮ってご参加ください。
テーマ:ジェンダー史と帝国主義研究の現在地
日時:2025年12月21日(日)14:00-17:00。懇親会:17:30-
形式:ハイブリッド。対面開催の会場:早稲田大学戸山キャンパス33号館331教室
*例会や懇親会への参加については、準備の都合上、事前登録をお願いしております。下記URLからの事前登録にご協力ください。2025年12月16日(火)までのご登録をお願いします。
https://forms.gle/a8V3vV1pqRxjzpG19
<報告>
北田依利(東京大学):「帝国のフロンティアをいやして:米領フィリピンの性産業と日本人移民」
竹田安裕子(上智大学):「支配の歴史を編み直す:マリアナ諸島の女性史・フェミニズム研究との対話」
<コメント>
佐々木一惠(法政大学)
上林朋広(甲南大学)
趣旨文:
ジェンダーの視点からアメリカ史を見るとき、その描き方や検証方法はどのように変わるのであろうか。アメリカ・ジェンダー史という研究領域は、女性の経験や運動を中心的に扱う「女性史」としてスタートしたといえるだろう。アメリカ女性史研究の第一人者・有賀夏紀は、アメリカの女性史研究は第2波フェミニズムの展開と密接に関連していると指摘している(『アメリカ・ジェンダー史研究入門』2010年)。その後、フェミニズムから新たにうまれた「ジェンダー」という分析概念を取り込んだことで女性史は新たな動きをみせ、ここから「ジェンダー史」という新しい学問領域も生まれた。ジェンダー概念が、近年のアメリカ史研究において不可欠かつ中心的な分析視角となったことは論を俟たない。そしてその重要性は、今後一層増すものと予想される。
近年の傾向では、ジェンダー概念の適用によって、アメリカ帝国主義を読み解く研究が盛んである。この潮流では、アメリカ史の空間的・時間的区分に再考を迫ったり、インターセクショナルな抑圧や特権の構造を浮き彫りにしたり、国家や集団の表象や言説に見られる支配-被支配関係を明らかにするといったことが行われている。特に、近年めざましく進展したグローバル・ヒストリーの領域においては、国民国家の枠組みからは見えてこない帝国統治の技術に注目が集まり、なかでも帝国が人種等の差異を使って人口を管理し、その統治方法の根幹には結婚や子育てといった私的領域・親密圏への介入があったことを指摘するフェミニズムの研究は重要である。
以上のような研究潮流をふまえ、12月例会では、日本においてこうした領域における最先端の研究を牽引する新進気鋭の若手研究者に、その研究史と最新の研究動向を紹介してもらい、また、女性が客体となりがちな一次史料の読み解き方を含めた研究手法の工夫などについて報告してもらう。さらにグローバル・ヒストリーや、被支配者の声を掘り起こすことの困難さといった視点から考察を深めるため、2名の研究者をコメンテーターとして招聘する。ジェンダー的観点からアメリカ史を語ることの重要性や課題について再確認し、活発な議論を通じて新たな知見を得る機会としたい。