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日本アメリカ史学会第36回例会 「パネル企画:文化の境界性」

日本アメリカ史学会では、関西アメリカ史研究会、国際政治学会関西例会と共催で、「文化の境界性」と題して、7月の例会を以下の要領で開催いたします。ふるってご参加ください。

日時: 2016年7月9日(土) 14:00~17:30 
会場: 関西大学千里山キャンパス第一学舎5号館E403号室
〈交通アクセス〉    http://www.kansai-u.ac.jp/global/guide/access.html
〈キャンパスマップ〉 http://www.kansai-u.ac.jp/global/guide/mapsenri.html (黄色1-5の建物の4階)

※例会終了後に、関西大学構内のレストランにて懇親会を実施します。会費は飲み物込みで3500円です。ご参加の方は7月2日(土)締め切りで、大津留(ckotsuru(a)kansai-u.ac.jp)までお申し込みください。


報告者:
山本 航平(同志社大学・院)
「19世紀末キーウェストにおけるキューバ人移民コミュニティ
             ――野球と独立運動の関係を中心に」

徳永 悠(京都大学)
「戦前ロサンゼルスにおける日本人移民とメキシコ人移民の相互関係
            ――環太平洋地域を見渡す社会史として」

森山 貴仁(フロリダ州立大学・院)
「1970年代の多文化保守主義とラティーノ」  

討論者: 南川文里(立命館大学) 
     小田悠生(中央大学)

「パネル企画: 文化の境界性」
企画の趣旨:
 移民の国アメリカを構成する人口は近年非常に多様化していますが、その中でも急速に人口比が増しているのがラテン系の人びとです。ヨーロッパとの関係を強く持ちながら発展したアメリカは同時に、隣接あるいは近接するラテン系の国々と複雑な関係を展開してきました。今日アメリカの領土となっている南西部は、19世紀まではメキシコの領土でありました。また、キューバとの関係は冷戦の文脈で注目されがちですが、19世紀からキューバ人はアメリカ社会の中に移民コミュニティを形成してきました。このように、ラテン系の人びとはアメリカ合衆国との間に、あるいはその内側に形成された多様な境界を挟みながら、自らの存在の意味をアメリカ社会に問い続けてきたと言えます。
 本企画では、3名の報告者が、19世紀末から20世紀後半までの時期を対象として、メキシコ系・キューバ系を含むラテン系がエスニシティに基づいて展開した政治・社会運動と、それぞれの時期のアジア系アメリカ人を含む他の民族・文化集団との間で構築された相互関係に着目して歴史的に考察します。その際、ラテン系コミュニティの故国との関わり合いが如何なる影響を及ぼしたのか、ラテン系という集団の境界性がどのように引かれたのか、さらにまた「文化の境界」を透過する集合的なアイデンティティの形成や各集団間の対立・依存・連帯といった諸問題がどのように展開したのかについて、国際情勢との関連性も視野に入れながら考えたいと思います。
     
報告要旨:
山本 航平(同志社大学・院)
「19世紀末キーウェストにおけるキューバ人移民コミュニティ――野球と独立運動の関係を中心に」
 アメリカ合衆国へのキューバ人移民(亡命者)は、第一次キューバ独立戦争(1868-78年)の勃発以降、急激に増加する。現在の合衆国においては、フロリダ州マイアミに最大のキューバ人コミュニティが形成されているが、最初期の移民たちは主に同州キーウェストへと渡った。
 従来の研究において、タバコ産業で栄えたその小島が、キューバ独立運動の過程で重要な役割を担ったことは指摘されている。しかしそれらは、ホセ・マルティのような独立運動の中心人物とキーウェストの関係性や、タバコ労働者たちの労働運動に注目する傾向が強く、コミュニティ内部の文化的側面はほとんど等閑視されてきた。
 上記の問題意識のもと、本報告では野球とキューバ人移民の関係を軸に議論を進めることで、野球がいかにキューバ人のネットワークを構築し、どのような形で独立運動のコンテクストと接合していたのかについて検討したい。

         
徳永 悠(京都大学)
「戦前ロサンゼルスにおける日本人移民とメキシコ人移民の相互関係――環太平洋地域を見渡す社会史として」
 19世紀中頃から現在まで、アジア人とメキシコ人は様々な差別や格差を経験しながら、ロサンゼルス社会の経済的・文化的発展に大きな影響を与えてきた。アジア人移民とメキシコ人移民それぞれについてはすでに数多くの歴史的研究があり、さらに近年、両者の相互関係に関する研究も次第に増えつつある。しかしながら、戦前ロサンゼルスで主要な移民集団として非白人人口の約8割を占めていた日本人移民とメキシコ人移民の相互関係に着目した研究は、言語的制約もあり、一次資料にもとづいた詳細な研究がまだ殆ど為されていない。
 本報告では、アジア人移民とメキシコ人移民の相互関係に関するこれまでの主要な研究を概観した上で、戦前ロサンゼルスで生活した日本人移民とメキシコ人移民の相互関係について理解することが、環太平洋地域という広い枠組みの社会史研究にどのように貢献し、新たにどのような知見を我々に与えてくれるかについて報告する。

森山 貴仁(フロリダ州立大学・院)
「1970年代の多文化保守主義とラティーノ」  
 本報告では、ラティーノを中心に1970年代以降の「多文化保守主義(multicultural conservatism)」について検討する。保守主義運動は白人中産階級を主体とし、移民や、カソリック、人種統合、同性愛者の権利などに対する反発を特徴として、排他性の強い運動とされる。しかし長期的にみると、かつて排外主義の攻撃対象であったカソリックやユダヤ系の一部が1930年代には保守主義に加わったように、保守主義は包摂性も擁している。この包摂の傾向は市民権運動の時代(1954-1965年)以降にもみられ、黒人、女性、同性愛者、ラティーノ、アジア系などから保守主義に参加する者たちが現れた。なぜこうしたマイノリティは、自らが所属する集団に批判的な保守主義を支持するのだろうか。今回の報告は1970年代以降の保守派ラティーノに焦点を当て、とくに宗教の役割について考察したい。


日本アメリカ史学会運営委員会

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2016年05月07日 11:00に投稿されたエントリーのページです。

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