日本アメリカ史学会会員のみなさま
『アメリカ史研究』 第49号では、「アメリカと占領」との特集テーマで論考を募集します。下記の趣旨説明と投稿要領を参照の上、ふるってご応募ください。
趣旨文:
2025年、日本は戦後80年を迎えた。しかし、終戦は単に戦闘の停止を意味したにすぎず、その瞬間に「平和」が――それがどのようなものであるにせよ、いきなり実現したわけではない。実際には、アメリカを中心とした連合国による占領が開始され、マッカーサーという軍人を最高司令官とする統治が始まり、占領軍兵士による暴力は戦時の残酷さを継続していた。にもかかわらず、「良い占領」という歴史像が形成され、とりわけ日本占領は「成功例」として、イラクやアフガニスタンへの介入を正当化する「モデル」として参照されてきた。この「占領=解放=成功」という理解は、戦後アメリカの世界的覇権を正当化する装置として機能する危険がある。このことは、MAGAをかかげる現政権の政策や、パレスチナ占領やウクライナ戦争といった同時代の現実を前にするわたしたちにとって、喫緊の問いを突きつけていると言えよう。
いったい、<占領>とは何か。
占領とは、――善意的と称されるものであれ、抑圧的かつ暴力的なものであれ――他国による支配の一形態である。同時に、占領者と被占領者のあいだに圧倒的な権力勾配がありつつも、占領される側の行為主体性(エージェンシー)が発揮され、多様な主体の利害がせめぎ合い、交渉や制度的実践などを介して関係性が再編される場でもある。
過去の占領研究では、政治経済外交など国家や政策に焦点をあてた「上からの」分析が中心であった。しかし近年は、占領軍スタッフやその家族、あるいは民間人との交流といった「下からの視点」が重視され、「ソフトパワー」や「非公式大使」の役割が占領秩序を支えたことが明らかにされている。占領は、単なる一方的な支配構造ではなく、占領者と被占領者の交渉・摩擦・協働・抵抗が織りなされる「コンタクト・ゾーン」であり、権力関係が複雑に再構築されていくプロセスとしてとらえ直されつつある。
こうした占領研究の新しい潮流を踏まえ、本特集「アメリカと占領」では、占領をめぐる多様な事例における占領者と被占領者との相互作用、特に占領期の私的領域における人びとの「生きた経験」に注目したい。対象は、日本占領を含みつつそれに限定されず、沖縄、太平洋諸島、ドイツや韓国、あるいは中米・カリブ諸国や中東地域などにおけるアメリカが関わった占領経験を含む。占領はいかに帝国主義や覇権の展開と結びついたのか。いかにして被占領社会の法律や社会制度、人種・ジェンダー秩序を変容させたのか。被占領者はいかに抵抗し、順応し、交渉したのか。占領は占領者と被占領者の日常や個人的な相互作用を通じ、双方の生活にいかなる影響を及ぼしたのか。そしてその経験や記憶は、今日の世界秩序における権力の不均衡や暴力にどのような痕跡を残しているのか。
いま、<占領>を批判的にとらえ、歴史的に再検討する作業が求められている。本特集は、そのための新たな知見を広く集める場としたい。
■特集投稿論文の要領
1)投稿資格
日本アメリカ史学会の会員
2)制限枚数
本文・脚注ともに1ページ 43字×38行で 17ページまで 注・図表を含む(厳守)
(英数字は2文字で、かな1文字と数える。)
3)期限
完成原稿の提出 2026年2月6日(金)必着
4)注意事項
①完成原稿は、メール添付によりMSワードあるいはPDF形式のファイルの形で編集委員会Eメールアドレス(下記)に送付し、同時にハードコピーを学会事務局に郵送してください(期限厳守)。なお、編集委員会からの受領通知を必ずご確認ください。
編集委員会Eメールアドレス: editors_at_jaah.jp
事務局住所:日本アメリカ史学会事務局
〒100-0003 東京都千代田区一ツ橋1-1-1 パレスサイドビル
株式会社毎日学術フォーラム内
②原稿には表紙をつけ、そこに、投稿者の氏名、所属、連絡先(住所、電話番号、メールアドレス)を明記してください。査読の公平性を保つため、論文本文にはタイトルのみを記し、氏名等は記載しないでください。
③原稿は横書きとします。原稿のフォーマット等に関しては、日本アメリカ史学会ホームページに掲載の執筆要項にしたがってください。
④完成原稿は、編集委員会が審査し、その結果をすみやかに投稿者に通知します。
『アメリカ史研究』編集委員会