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日本アメリカ史学会第22回年次大会プログラム

日本アメリカ史学会会員の皆様

2025年9月13日(土)、14日(日)に開催される日本アメリカ史学会第22回年次大会のプログラム概要が決まりましたのでお知らせいたします。皆様のご参加をお待ちしております。

日時 2025年9月13日(土)・14日(日)
会場 愛知県立大学長久手キャンパス(愛知県長久手市茨ケ廻間1522番3)
連絡先 久田由佳子(yukahisアットマークfor.aichi-pu.ac.jp)
開催方法 会場での対面方式のみ 

9月13日(土)
幹事会 12:00〜13:00

シンポジウムA 13:30〜17:00
「労働運動から再考するアメリカ史」
報告者:
髙橋茜(南カリフォルニア大学・院)
「『歩きながら道をつくる』: 米国高等教育・大学院生労働者労働運動の現在地」(仮)
徳永悠(京都大学)
「「環太平洋の労働現場」とストライキ:1930年代ロサンゼルスにおける日墨移民集団間の対立と調和」(仮)
中島醸(拓殖大学)
「アメリカの産業の変化と労働運動」(仮)
コメンテーター:
鈴木玲(法政大学)
土屋和代(東京大学)

総会 17:15〜18:15
懇親会 18:30〜20:30

9月14日(日)
自由論題報告 9:30〜11:30
(第1報告 9:35〜10:10 第2報告 10:15〜10:50 第3報告 10:55〜11:30)
セッションA
土屋匠平(一橋大学・院)
「20世紀転換期フィラデルフィアにおける黒人児童救済活動とぺニー・ランチ――スーザン・ウォートンによるセツルメント運動に着目して」
一木優花(東北大学・院)
「黒人自由闘争における地域社会と「ブラック・パワー」の日常的実践――黒人女性活動家ジェニファー・ローソンの事例から」
大賀瑛里子(昭和女子大学)
「1980年代後半から1990年代初頭のハワイ観光開発をめぐる議論――ハワイ先住民・地元住民のリゾート開発への認識」

セッションB
中村信之(神田外語大学)
「アメリカのパブリック・ディプロマシー黎明期――ニコラス・バトラーとカーネギー国際平和財団を中⼼に」
安田求(慶應義塾大学・院)
「アメリカおける宗教右派と共和党の協力関係ができるまで――中絶をめぐる価値観と政党戦略の交錯」
佐原彩子(共立女子大学)
「サバイバル英語」の成立――難民定住がもたらした英語教育への変化」

(特別企画 11:40-13:10)
 『バーバラ・リーの闘い~権力を恐れず真実を~(原題:Barbara Lee: Speaking Truth to Power)』(アビー・ギンズバーグ監督、2000年、米国、83分)上映会
※ 上映会場でランチをとっていただくことができます。

シンポジウムB 13:20〜16:20
「アメリカ医療福祉制度の変遷と展望」
報告者: 
平体由美(東洋英和女学院大学)
「公衆衛生の女性化――1920年代の公衆衛生看護教育」
 牧田義也(一橋大学)
「20世紀初頭のニューヨーク市における知的障害施策の展開」
 山岸敬和(南山大学)
「トランプ2.0における医療をめぐる政治的争い」
コメンテーター: 
佐藤千登勢(筑波大学)

シンポジウムC 13:30〜16:30
「アメリカ史における「忘却」という暴力――先住民市民権法から100年」
報告者: 
地村みゆき(愛知大学)
「20世紀転換期の先住民知識人と『忘却のメカニズム』(仮)」
中野由美子(成蹊大学)
「ウォードシップからシティズンシップへ――1924年市民権法と先住民の土地・人権問題」
川浦佐知子(南山大学)
「標本・遺骨・人権――1990年アメリカ先住民墓地保護および返還法(NAGPRA)と
先住民の記憶」
コメンテーター: 
森丈夫(福岡大学)

[シンポジウム趣旨文]
シンポジウムA
「労働運動から再考するアメリカ史」
 近年アメリカではストライキの活発化が目を引く。2023年9月15日から1カ月半に渡って続いたデトロイトにおける3大自動車メーカーでの一斉ストライキはその典型である。同じ年にはハリウッドでも半年以上に及ぶストライキが起こり、2024年も国際港湾労組が東海岸を中心に36の港湾でストライキを行い、内外の海上交通や輸送は大いに混乱した。既存の大きな労働組合とは異なる新たな動きもみられる。多様な背景を持つさまざまな組合員を組織化し、ストライキを実施するAmazonやスターバックス労働者の活発な動きはその典型であろう。2023年にスターバックス労働者がLGBTポリシー推進を訴えてストライキを行ったように、そのターゲットは性的少数者の地位向上や環境保護など広がりを見せている。
 労働運動は労働条件の向上を訴えるだけではない。アメリカ史においては女性参政権運動や公民権運動との深い関係は周知の通りである。その一方で、人種偏見をあらわにし、男性の既得権を守ることを掲げた動きも確認できる。第二次世界大戦中、白人男性の職場に現れ始めた黒人や女性に対して、ヘイトを前面に出した抗議行動やストライキが数多く発生した。移民労働者の組織化や雇用をめぐる既存労組の立場は一様でなく、大いに揺れている。
アメリカ史を振り返れば、労働運動はいろいろな時代、場所、問題をめぐってストライキを行い、それらは地域に生きるさまざまな人びとの生活全体に関わる問題を含んでいた。今よりもより良い環境にするため、あるいはこれまでの環境を守るため働く人びとは行動してきた。それらの中では階級間の格差だけでなく、人種やジェンダー、セクシュアリティをめぐる秩序、移民労働者へのスタンスの違いが浮き彫りとなり、警察暴力や戦争をめぐるせめぎあいも顕著に現れてきた。
本企画では、アメリカ史を労働運動から捉えることでどのようなアメリカ社会の姿が見えるのか、また、いかなるアメリカ社会を展望していくことが可能かを考えていく。アメリカ史の中で多様な要求を掲げて実践を行ってきた労働運動にフォーカスし、さまざまな分野の専門家からの報告を受けて、会場全体で問題意識を共有していきたい。

シンポジウムB 
「アメリカ医療福祉制度の変遷と展望」
第二次トランプ政権が2025年から発足し、就任初日の1月20日に世界保健機関(WHO)からの脱退を宣言した。WHOの新型コロナウイルスへの対応をめぐっては、第一次トランプ政権でもWHOに対して批判をくり返し、脱退を表明したものの、バイデン政権に交代することでWHOに留まってきたが、就任早々、アメリカ第一主義にもとづく公約として実現させた形となった。一方で、オバマ政権下で成立した医療費負担適正化法(ACA)は、第一次トランプ政権下での廃止は阻まれたものの、第二次トランプ政権ではバイデン政権下で拡大したACAを逆行させるような大統領行政命令が発出された。さらに厚生長官には反ワクチン発言で知られるロバート・ケネディ・ジュニアが起用され、アメリカの医学・医療業界で懸念の声が高まった。これは、反ワクチン言説に見られるような科学的知識に関する懐疑論が広がることで、ワクチンで予防可能な疾病流行が予想されたためであったが、実際に6月までにテキサス州を中心に麻疹の感染流行が起こり年内まで続くようである。
このような健康・医療保険制度および公衆衛生をめぐるトランプ政権による国際的・国内的な動きは、その他の政策をめぐる動きも合わせて、共和党と民主党の間の政治的対立を深刻化させてきた。本シンポジウムでは、アメリカ第一主義を掲げる第二次トランプ政権はどのような健康・医療保険制度および公衆衛生政策への変化をもたらすのかについて、これらの分野を専門とする三人の報告者および討論者の知見によって、アメリカ史の文脈からさらに深く考察してみることを目的とする。つまり、第二次トランプ政権の発足は、医療の社会化および公共化が推進された20世紀の流れを大きく退行させることになるのか、医療史や社会史にその変遷を位置付ける。そして、第二次トランプ政権の展望をこれまでのアメリカの健康・医療保険制度および公衆衛生に関する歴史的視点から考察を試み、フロアとの活発な対話を期待したい。

シンポジウムC
「アメリカ史における「忘却」という暴力――先住民市民権法から100年」
21世紀に入り、アメリカ先住民の「失われた命」をめぐる議論が活発化している。背景には、国家、入植者、教会、学問による先住民への暴力が、具体的な数値を伴って可視化されたことがある。そのような中、2024年にはアメリカ先住民に市民権を付与したスナイダー法(1924年)がその施行から100年を迎えた。アメリカ市民である先住民の命が忘却され続けてきたこの1世紀を、アメリカ史にどのように位置づけることができるのか。本シンポジウムは、アメリカ先住民に対する「忘却のメカニズム」と市民権の関係性、そして「先住民」と「市民」の二つのカテゴリーを引き受けつつ「忘却のメカニズム」に対抗してきた人々の営みをたどりながら、「先住民市民権法から100年」を考える。                            
FBIによる報告(2021年)によれば、同年の先住民の行方不明者は約1,500人、先住民の殺害、および過失のない殺人事件数は2700件に上る。前内務長官デブ・ハーラント主導の政府調査(2024年)は、1964年までに先住民寄宿学校における死者数は少なくとも973名と報告している。またスミソニアン博物館や各州・連邦機関には11万体以上の先住民の遺骨が保管されている。こうした状況に対し、第一次トランプ政権下において、先住民女性が被る暴力調査のための二つの法律(サバンナ法、ノットインビジブル法、2000年)が制定され、バイデン政権下では、寄宿学校を経験した先住民の人々に対する正式な謝罪が行われた(2024年)。先住民への暴力を具体的な数値を示すことで可視化する超党派的な試みは、「先住民の排除と統合」からアメリカ史を再考する1960年代以降の先住民史観の流れを汲みとるものであると言えよう。
本シンポジウムでは、しかしながら未だ十分に検証されていない先住民への暴力の「忘却のメカニズム」 に着目する。とくに「市民権(シチズンシップ )」はアメリカ先住民に何をもたらし、またその歴史から何を隠蔽することになったのか。さらにアメリカ先住民が、どのように「忘却のメカニズム」に対抗し、いかなる連携と戦略をもってその権利と歴史を取り戻そうとてきたのか。本シンポジウムでは、以上の問いに対し、19世紀、20世紀、21世紀のそれぞれの時代におけるアメリカ先住民史を実証的に論じてきた3名のご報告から検証する。

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2025年06月19日 20:19に投稿されたエントリーのページです。

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