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第2回例会の報告

日本アメリカ史学会 第 2 回例会

テーマ: 近世大西洋世界における「移動」— 奴隷制と奴隷貿易を中心に

日時: 2004 年 12 月 4 日 (土) 14:00 - 17:30
会場: 明治大学駿河台キャンパス リバティタワー 19 階
   119JK 教室

論者および題目
西出 敬一 (徳島大学)
 「プランテーション・コンプレックスの移動性について」
大峰 真理 (千葉大学)
 「18世紀フランス奴隷貿易 — ナント商人の環大西洋ネットワーク —」

コメンテーター: 鈴木 茂 (東京外国語大学)、遠藤 泰生 (東京大学)

司会: 橋川 健竜 (千葉大学)

共催: 明治大学文学部西洋史学専攻科研費プロジェクト
        「欧米における移動と定住・地域的共同性と諸形態に関する研究」

企画主旨

16 ~ 18 世紀の歴史を大西洋を中心に考えるアプローチは、ここ十数年で大幅な進展を見てきた。アメリカでは J・P・グリーンの先導した、南部を中心にすえてイギリス領西インド諸島を加える植民地史の見直しが、またイギリスでは、イギリスをイングランドの拡大版としてではなく、スコットランドとウェールズ、またアイルランドその他の植民地を含めた「ブリテン」として考えようという J・G・A・ポコック提唱の「ブリテン史」が、それぞれ進んできた。近年では、そこに英米以外の環大西洋地域についての研究を重ねる動きが強まり、大西洋世界にコミュニティとしての一体性があったとする視点も出ている。インド洋世界などとの対比を促す動きすらあり、北米植民地史についての最も権威ある研究誌『ウィリアム・アンド・メアリー・クウォータリー』にマダガスカルにおける奴隷狩りの記憶をめぐる論文が掲載されたことは、その端的な例である。しかし、現代アメリカ社会における差別、また包摂へむけた営みに関心を集中しがちな日本のアメリカ史研究では、植民地時代の、さらに意図的に脱一国史観たろうとするこうした動向は、十分に共有されてきたとはいえないであろう。

その意味でも今回、明治大学文学部西洋史学専攻科研費プロジェクト「欧米における移動と定住・地域的共同性と諸形態に関する研究」との共催で、アメリカ史を越えるパネルを組んで大西洋世界について考える機会をもてるのは、有意義なことである。本例会では、大西洋世界を行きかった人、商品、制度、思想などのうち奴隷制と奴隷貿易に焦点をあてたい。アイラ・バーリンによる「大西洋クレオール」概念の紹介もあり、アメリカにおける奴隷制研究は植民地時代に注目するようになった。多様な地域間の交流が各地の奴隷制の展開に強い影響を与え、また身分の面でも流動性を体現する奴隷が存在したことを重視する見地から、西インド諸島さらにはアフリカも射程におさめた研究が現れ、大西洋アプローチの研究の重要な一翼を担っているのである。本例会では奴隷狩り・商人・船員たち・プランター・新大陸先住民・反奴隷制運動家など、奴隷制と奴隷貿易に関係する人間のつながりを広く考えた上で、自由に発表を組んでいただくようお願いした。まず、ジャマイカを中心に北米イギリス植民地をも視野に入れて奴隷制の社会史・生活史を研究しておられる徳島大学の西出敬一氏より、発表をいただく。続いて、国際商業史という、従来の経済史よりも広い観点から近世フランスのヨーロッパ各地、またアフリカとの関係を研究しておられる千葉大学の大峰真理氏より、ご報告いただく。東京外国語大学の鈴木茂氏と東京大学の遠藤泰生氏には、それぞれブラジル史とアメリカ植民地史の観点からのコメントをお願いした。近現代の国民国家や人種・エスニシティ理解と大きく異なる前提に基づいていた世界と、そこで取り結ばれた多様な関係を考えることで、アメリカ合衆国史を考える発想を広げる機会となるなら幸いである

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2004年12月04日 11:52に投稿されたエントリーのページです。

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